Choi流の独立スタイル!
「事業譲渡」の誕生を追う
2008年10月に平岸ゴールデン街店からスタートし、10店舗にまで拡大したChoiグループ。平岸、澄川、南郷、36号線沿い、円山などローカルに欠かせない存在として、今夜も笑い声がこぼれる。Choiから独立して自分の店を持ったOBはこれまで何人もいるが、店名も店舗もそのまま譲り受ける『事業譲渡』という形で初めて独立したのが高橋一人さん。なぜそのような形にいたったのか、事業譲渡は普通の独立と比べてどう違うのか、今後もこのような独立スタイルは続くのか…。独立した側の高橋一人さんと、事業譲渡での独立を提案した小笠原修平社長に詳しく話を聞いてみた。
(インタビューアー:原大介)
立喰酒場Choi澄川店 代表髙橋 一人
DATA | |
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生年月日 | 1987年4月26日生まれ |
出身地 | 札幌(中の島) |
店舗オープン | 2022年4月1日 |
Choiでの勤務 | 立喰酒場Choi澄川店、大衆餃子酒場Choi 店長 |
在籍期間 | 2013年1月~2022年3月 |
事業譲渡という
提案に感じた
社長のはからい
澄川駅を出てすぐ。日が落ちて暗くなりきる前から楽しそうに賑わっている様子が外から見える。「後ろごめんなさいね」とカウンターの奥に通され、壁の黒板を見ると『4月1日に独立しました!今は個人店です!』の文字。これを見なければ何度か通った人でも、澄川Choiが高橋さんの店になったことには気付かないだろう。店名も内装もメニューもカウンターに立つ高橋さんも、何一つ変わらないのだから。
高校時代を過ごした澄川で、自分の店を持つ。
「今年(2022年)4月に澄川Choiを買い取る形で独立をしました。ここは2013年1月にChoiに入社して初めて店長を任されたお店です。2016年8月から2年ほどは南平岸店で店長をしながら澄川店をマネジメント。その後にまた店長として澄川へ戻り3年半ほど働いて独立しました」。近くに通った高校があって、その頃ここはたこ焼き屋だったそうだ。「まさかそこが自分のお店になるなんて高校時代は想像もつきませんでした」と笑う。
心配や不安、リスクが少ない独立に満足。
「自分は0から1を作り出すのが苦手なタイプなので、独立したいと伝えた後、このような形を提案してくれたのは社長の修平さんのはからいだと思います」。普通の独立とは何が違うのだろうか…「自分の店を持とうと思ったら、テナントを決める、店舗デザインを考える、仕入先を探す、メニューを作る、什器を揃えるなど、やらないといけないことが驚くほどたくさん。お客さんが来てくれる保証はなく不安がつきまとうし、資金繰りがうまくいくかなど心配の種がつきません。けど勝手知ったお店を譲っていただき、Choiの名前もついたまま。お客さんもそれまでと変わらず来てくれる。店での働き方も長く馴染んだものがある。心配や不安、リスクの少ない独立になってとても満足しています」。
店長の経験が、そのまま経営者としての土台になる。
独立後もグループのスタンプラリーに参加したり、グループのHPにも変わらず紹介してもらったりと、Choiファミリーとしてつながっていることが心強いそうだ。こんなことも話してくれた。「自分で店を始めてみて気づいたのですが、売上日報を作る、来店人数を記録する、仕入額や原価率を計算するなど、Choiの店長として毎日やっていた業務が自分で店を経営する上でそのまま役に立っています。和食職人になりたい人が和食のお店で修業をするように、自分の店を持ちたい人にとってChoiは最高の環境です」。
3店舗の経営が目標。事業譲渡での独立がその基盤に。
結婚して子どもが生まれ、『社長の右腕として働いていく』と雇い人としてのキャリアを考えていた時期もあったそう。「ところが修平さんを見ているうちに、うらやましく思うようになりました。例えば子どもの夏休みに合わせて長く休むため、その前に集中して仕事をする。働き方や暮らし方を自分で決めることができる姿に『修平さんのようになりたい』と思うことが増えたんです。ゆくゆくは3店舗を経営することが目標ですが、1店舗目として澄川Choiを譲っていただいたことが、そこへと続く確かな基盤になりそうです」。
ここを入り口に、澄川で飲むことを楽しむ人が増えてほしい。
髙橋さんと話していると、澄川へ愛がひしひしと伝わってくる。「澄川という場所はいろんなお店があって飲み歩きに楽しい土地柄です。昔はお客さんが他の店に行ったと聞くとやきもちに近い気持ちがありましたが、いまでは希望を聞いて2軒目3軒目を紹介しています。そのお客さんが帰りにまた寄ってくれて『教えてもらった店よかったよ!』と言ってくれた時は、また1人澄川ファンを増やせたと感じてすごく嬉しいです」。初めて店長を任された時から縁が生まれ、いまは自分の店になった澄川Choi。そんな役割を果たす店としてこの地で続けていきたいと力強く話してくれた。
立喰酒場Choi 澄川店
営業時間:16:00~24:00
定休日:日曜定休
TEL:011-822-0224
住所:札幌市南区澄川4条1丁目1−22
澄川駅北出口でてすぐ右
Choi オーナー 小笠原修平
確かな仕組みで
独立の決断を
後押ししたい
澄川店の髙橋一人さんは、独立まで9年の時間を要した。それはスタッフのキャリア形成をいかに応援していくのかという、会社の試行錯誤と期間が重なったからだ。「9年は長い。これからは4~5年、人によっては3年で独立できるようにしたい」と話す小笠原社長。『事業譲渡による独立』という新しい選択肢について話を聞くと、その根底にはスタッフの将来への想いを感じた。
店長の10年20年後先のことを考えて。
「Choiには自分で店をやりたいという人が集まってくるが、新店舗の立ち上げから任されることも多いため店に愛着が生まれ、結果的に長く働いてくれるのがグループの強みです。ただ1店舗の規模が小さいぶん売上を伸ばすにも限界があり、売上が伸び続けない以上は勤続年数に応じて店長の収入を上げ続けるのは難しい。」
そこで成果をだしている店長には複数店舗をマネジメントする役割を担ってもらうことで収入をあげるなどの模索をしたがうまくはまらず。
「よくよく考えてみればマネジメント=管理という発想が社長の僕にはない。自分がマネージメントについて教えられないのに、店長にあとは個人のセンスでマネジメントをやれというのは無理があった」。そこには管理せず任せるいう、グループの在り方の根幹に関わるものが横たわっていた。
成功の鍵の「いいテナント」は見つからない。
将来独立したいと入ってきても踏み出せない理由は、Choiの居心地の良さだけではない。リスクをとる決断ができずに二の足を踏んでしまう。また一言に独立といっても簡単なことではない。
「独立する時にネックになるのが、テナントなんです。これから店を始めようとする人に話がいくのは最後で、解約の相談があった時点で実績のある経営者のところから順番に話が回ります。そもそもいいテナントはなかなか空きません」。澄川エリアをみても9年前に店を始めて以来、それ以上のテナントに出会えていないそう。「独立してもなかなか満足のいくテナントが見つからず、でも生活のこともあるからと妥協してスタートしてしまうと、始めから厳しい勝負になってしまいます」。
実績のある店舗を引き継ぐ心強さ。
こうした状況も踏まえてたどり着いたのが事業譲渡での独立というカタチ。Choiの各店は、『立地×業態』の力もあり、失敗しづらい仕組みになっているそうだ。いわば百戦錬磨の小笠原社長が目利きをした状態。そこを引き継ぐことで、テナント探しに苦労することもなく、常連さんがすでにいるので集客のリスクもない。積み上げてきたものがゼロにならず、その延長線上で独立できるなんて、こんなに理想的で心強いことはないだろう。
小笠原社長はこうも話す。「またやりがちなのが『自分がいないと回らないお店』を作ってしまうこと。現場に立ち続けないと店は続きませんが、60歳70歳になって同じテンションでお酒を提供して…というのはしんどい。年をとって腰を悪くするかもしれない、病気やケガになるかもしれない。そうなっても生活していける環境を作るためには、お店を人に任せれられる仕組みにしていくべきだというのが私の考えです」。まさしくChoiはそのような考えで作られているお店であり、独立した高橋一人さんが目指すように、2店舗目3店舗目を自分でプロデュースする時の生きた参考になっていくはず。
独立をしたら収入があがる設定に。
「事業譲渡にあたっては今まで通りの売上・利益があれば、店長の時より収入が上がる設定になっています」とのこと。このあたりに小笠原社長の親心が見え隠れするようだが、「義理人情じゃないですけど、利益の出ているお店をそのまま渡し独立のリスクを下げた環境を作ることが、頑張って働いてもらった恩に報いることかなと考えています」。そういう会社の方がかっこいい。面白いし、魅力がある…とも。その根底には「生きやすい生き方、自分で選べる生き方をしてほしい」という小笠原社長の想いを感じた。ここまで読んで何かがあなたの心に触れたなら、何も迷わずにまっすぐChoiへ。